2022-09-01から1ヶ月間の記事一覧

救世主

随分前に予約をしておいたが、日程を変えざるを得なかった。読みが外れてしまったからだ。変更できる日が限られていたが、希望の週に予約を取り直すことができた。 帰省後は疲れをとることを優先し、いや口実にゆっくりしていた。実際、昼間に何度も睡魔が襲…

帰省

自分がとてもちっぽけに感じる。小さな窓から見下ろす景色は、人も車も形を捉えられない。広がる土地に街があることだけが確認できる。しばらくすると、辺り一面真っ白になった。下から見上げる雲とはまるで違う。ハイジのように本当に雲の上に乗れるような…

必需品

若干パニックだった。今乗った電車を慌てて降りる。すぐに駅のホームから電話を掛けるが一向にでない。隣には娘がいる。 「ママ、ここにかけたら?」 電話番号を変え、相手が出るのを待つ。 「○○店の××でございます」 繋がった。ひととおりの会話をし、今す…

右往左往

だいたい、いつもそうだった。刻々と日が迫っているというのに、何一つ終わっていなかった。 なぜ予約時にそうしておかなかったのだろう。当初から遅い時間に到着する予定だったのに、すでに伝えてあるホテルのチェックインの時間は早すぎた。変更の連絡をし…

帰還

青い空をみたら、顔が緩んだ。「気持ちのいい天気だな」ゴミを出すために表にでた。ほんの少し、外の空気に触れただけで、昨日までの自分をリセットできた気がした。 *** 週の初め、一通のラインが来た。「手伝い、これない?」彼女からラインが来ること…

再会

パソコン画面のカーソルは行ったり来たりしている。感情を書き記そうとするも、上手く表現できない。自分の行動に「意味があった」のか、「意味を持たせようとしている」のかを考えていた。 *** 何かの拍子に、携帯電話のカメラアプリが起動する。カメラ…

変わりゆく

湿度を示す数値は最適とはいえなかったが、外から入ってくる冷たい風が、不快さをかき消してくれた。雑音のない夜の静けさに包まれていると、急に雨音が耳に入ってきた。みるみるうちに湿度は上がっていく。それでも夜風に当たっていたくて、しばらく窓を開…

呪縛

猛暑が続いた季節は乗り越えたのだと、実感する。それは彼らが知らせに来たからだった。姿はみたことがない。幼いころも、大人になった今でも。開け放した窓から、心地よい風に乗って、ただリーンリーンと鳴く声が聞こえるだけだった。 洋室の端に山積みされ…

ときめき

星の形に似た葉が、こぼれ落ちるように小さな鉢からあふれ出ている様子が、愛くるしい。それとは打って変わって、対角線上には大胆で大きな葉をつけた植木鉢が、直置きされている。ナチュラルな色の家具で統一されたこの部屋は、まさに癒しの空間だ。ここで…