三度目の正直

「じゃじゃ~ん」 遥子ちゃんにお披露目をする日がようやく来た。 河川敷のテニスコートは水はけが悪く、前日の雨の影響を受けやすいと遥子ちゃんが言う。前回、前々回も、当日雨は止んでいたが、コートは使えなかった。昨日も夕方から雨が降り出したので、…

最新のモノ

データ更新を”自動”に設定しているが、スムーズではないので、手動で更新する。まだ使い始めたばかりで、要領を得ていない。 去年の夏から、毎日体重を量るようにしている。知らないうちに増えているということがあるので、意識して自分の体重を知っておくと…

個人情報バラまき作業

郵便局の窓口で、一通の封筒を差し出した。これで”終わり”ということになる。 もうずっとネット検索ばかりする毎日で、心身共に疲弊していた。職業訓練校を修了して三ヶ月以内に就職をし、活動報告をすることが義務付けられている。未就職という欄に丸をした…

歩こう

「今日だけは、やめて」という男の子のママの気持ちは、よく分かる。いつもは寛容なママであることが想像されるが、今日ばかりは勘弁してほしいだろう。通りすがりの私でさえ、冷や冷やした。ランドセルを背負って、おめかしした男の子は、水溜まりに足を入…

訪ね人

携帯電話に表示される番号は、知らない番号だった。電話に出ないでいると、すぐさま、家のインターホンが鳴った。まだ朝の8時過ぎである。そこには、知らない人が居た。 カレンダーに書くのをすっかり忘れていた。ただ、遥子ちゃんの経験がここで活かされる…

繋がり

先に彼女の方が、私に気付いてくれた。待ち合わせ場所に行くのに、同じ路線に乗ることが分かったのは、前日、彼女がグループラインで問いかけてくれたおかげだった。乗り換えの駅で合流し、次の待ち合わせ場所へと向かう。 彼女とは互いに認識できたが、次の…

開花宣言

春が好きなのは、三月が誕生月だからという理由なのかも知れない。 ベランダは一面に濡れ、サンダルのびしょ濡れ具合が、午前中の雨の様子を物語っていた。午後には打って変わって、太陽が顔を出し、空を明るくした。上着は必要なかったなと思うほど、外は随…

順次、家の外へ

別れの日がやって来た。最後に”ありがとう”と抱きしめた。 息子と娘には、とうに承諾は取ってあった。洋室のソファーの、しかも座面ではなく背もたれの上に鎮座していた彼らは、子供達の承諾を得てからは、私の部屋の隅へと移動していた。それから随分と長い…

決めたらやる

部屋の片隅にあった紙袋を自転車のカゴに載せ、橋を渡った。目的地に着くと、大きい紙袋と小さい紙袋を店員に預け、店内をぐるりとする。欲しいモノを探すのではなく、引き取ってくれそうなモノを確認する。今週の初め、リサイクルショップにようやく行くこ…

どっち派?

「きのことたけのこ、どっち派?」 ”私は、たけのこ派”と思わず、会話に参加しそうになった。小学生の男の子二人が、お菓子売り場にいる。質問した男の子は、たけのこ派で、私と一緒だった。 「じゃあ、コンソメとのり塩は、どっち派?」 同じ男の子が別の論…

捨て活

使えるけど使っていないペン。回収ボックスがあると知って、躊躇なく選別する。それでも使っていないペンすべてとはいかず、数本は手元に残し、あとは袋に詰めた。 片付けの方法は、いくつも見聞きしている。”8割捨てる”方法は、その名の通り、ゴミ袋に入れ…

旅の記録 ー続きー

先週会ったばかりの母から電話があった。ちょうどこちらからも、連絡しようとしていた。都合の良い、曜日だったからだ。あちらは雨がひどく降っているという。こちらも結構降っていると答えたが、まだそうでもなかったことが、後から分かる。その後、西から…

旅の記録

"かっこいいね"と雨の中を走る赤い車を、娘と一緒に見送った。 父と会った日の夜、同じ市内に住むよっちゃんと食事をした。近況はほどほどに、昔話が尽きない。記憶の答え合わせが面白い。同じ習い事をしていたのに、発表会の写真のどこに彼女が収まっていた…

父と娘

毎朝日課となっていることを、すっかり忘れていた。案の定、こういう日はいつもの如く、慌てて家を出た。 駅へと急ぐ。途中で新幹線を乗り換え、西へ西へと向かう。 私が幼き頃、父がサラリーマンだった時代があったらしいが、その後は自営業で商売一筋だ。 …

モノを減らす

燃えるゴミを二袋、燃えないゴミを一袋の半分ほど、捨てた。燃えないゴミの方は、捨てると決めてから長らく放置していたものだった。それらは、台所用品ばかりで、恐らく捨てたモノを記録に収めようとした当時の私が、とっておいたものだ。ちなみに、片付け…

西へ行く

青い空に、小さな白い雲が浮かんでいた。その光景を写真に収めたとしても、美しくはない。ゆらゆら揺れる電線が邪魔をしていた。 天気は良いが、随分と風が強い。花粉を浴びて帰宅すると、すぐさまくしゃみが出た。そうだ、マスクも必須だと気付いて、早速持…

しゅうかつ

ダイレクトメールばかりの受信箱をチェックしていると、見覚えのある差出人から”要返信”と記載されたメールが届いていた。事前に聞いていた報告日が近づいていたので、そのメールの内容については、ここのところ気にしていた。 期待に応えられるような過去形…

こんな日

踏切の向こう側にいる女性が、知っている人によく似ていた。勤務時間中にここに居るはずもなく、あまり見るのも失礼だなと、視線を逸らそうとした時、彼女は私に手を振った。似ているのではなく、本人だった。上下線の電車が通り過ぎる間が、妙に長い。もう…

春一番

待合室の椅子が足りないほど、混んでいた。時間潰しに携帯電話を眺めるのを躊躇する。自覚のない症状が、悪化するかもしれない。確かにパソコンや携帯電話を使用する時間が、大幅に増えていた。目を酷使しないよう、パソコンの使用に制限がかけられたらどう…

健康管理

深呼吸をした。時計を見ると、16時を過ぎたところだった。アラーム音で起こされてから、30分ほど経過していたが、嫌な夢の消化がまだ終わっていない。 昔住んでいた、実家の一階の一室に、母とまだ幼い息子と居た。私は、二階に身を隠そうとしたが、息子を母…

ミッション遂行

不備はない前提で、念のため確認をする。すると書類がニ枚足りないことが発覚する。一旦手が止まり数日が経過し、必要書類が同封されている夫宛の封筒を、ようやく捜索する。過去の私は、大事にしまい過ぎて、思いもよらぬファイルに収めていた。 ミッション…

立春を迎えて

目の前の光景に思わず”シュールすぎる”と口にした。いや、この場で声を出すのは御法度なので、正確には口にしたのではなく、心の中で呟いた。 ”シュール”という単語を使ったことがあっただろうか、ここで使うことがしっくり合っているのかも不明だが、恐らく…

久方ぶり

歩道の脇に、数えきれないほどのどんぐりが落ちていた。”どんぐりって秋だよなぁ”と素朴な疑問を抱いた翌日には、もう落ち葉と共に一掃されていた。制服を着た学生と保護者の二人組とすれ違う。ここのところ、よく見かける光景だ。恐らく、受験生だろう。 五…

寒さに負けず

ポケットに手を入れた。天気予報では、暖かいと言っていたが、風が冷たかった。 「ゆめちゃん、ダウン持ってなかった?」と遥子ちゃんが聞くのも、私が着ている上着が、薄手だったからだ。長年着ていたダウンは、この冬が来る前に処分した。着る時期が来たら…

平日の自由

騒音が鳴りやんだ。昼休みの知らせだ。静かなうちに、お昼ご飯を済ませておこうと、昨日のおかゆの残りを温めた。 一昨日から続いていた胃の痛みは、今朝になって治まった。しかし、まだ体は重い。訓練校が修了し、その後、立て続けに入っていた予定を終える…

年に一度

"Reception"と背後の壁に書かれた、長いカウンターには窓口が7つもあった。どの窓口もフル稼働で、待合室で待つ人達が次々と呼ばれていく。 席に着くと、私に充てられた番号の、一つ前の番号が呼ばれた。待合室の混み具合とは裏腹に、すぐ呼ばれるのだなと…

想い

携帯電話のアラーム音に胸がチクりとする。平日の7時5分にセットしていたアラームを停止した。明日以降、鳴らないように削除した。 「今日は眠そうだね」と言われ、その通りだった。昨晩はなかなか寝付けなかった。課題に追われて、ここのところ睡眠不足だっ…

冬の日

湯舟に浸かると、体が冷え切っていることを実感する。私の体積分の湯が浴槽から一気に流れでる。湯が捌けるまで、時間を要している様子を目の当たりにして、排水溝の掃除を怠っていることに気付く。まるで銭湯のように、並々と浴槽に張られた湯は、夫が追い…

便り

メールの受信箱に、見慣れない差出人の名があった。親切なお知らせは、終了と同時に継続を促すものだった。しかし、私には継続の必要はもうない。 届いた封筒のうち何通かは、ファイルに収めた記憶がある。途中から、その辺に置きだした。だいたいここら辺と…

環境を整える

赤い半纏が、案外重宝していた。膝には毛布を掛け、寒さをしのぐ。箱から顔を出しているティッシュが勢いよく揺れていた。冷え切った部屋を暖めるために、エアコンがフル稼働していた。 とにかくこの部屋は寒い。 自室に居る時間が多くなった。ベットを椅子…