個人情報バラまき作業

郵便局の窓口で、一通の封筒を差し出した。これで”終わり”ということになる。

もうずっとネット検索ばかりする毎日で、心身共に疲弊していた。
職業訓練校を修了して三ヶ月以内に就職をし、活動報告をすることが義務付けられている。未就職という欄に丸をした紙を封筒に入れ、郵便局へ出向く。最後の活動報告をした。
訓練校への報告は終えたが、実はもう一方、ハローワークの報告も数週間後にしなくてはならない。報告内容は同じであろう。

 

一旦、仕切り直すことにした。白紙に戻す。

 

破棄されることが前提の個人情報の提供だが、実に簡単に相手方はその情報を手に入れ、”私”という人間を知ることになる。応募すればするほど、ダダ洩れではないかと気付くと、余計に疲れてしまった。

職業訓練校へ行こうと思い立ったことも、その学びを続けると決めたことも、仕事の在り方にこだわったことも、その時の自分の心と行動が起こしたことである。

目的がブレないよう職探しをしていても、時には見失っている自分がいた。ネットの求人探しだけでなく、その過程の自身の考えや気持ちと付き合うのにも、疲れてしまっていたのだ。

 

少し肩の荷が下りたのは、期日を守るよう厳しく言われていた、最後の報告書の提出が終わっただけではなかった。
樹希ちゃんに、この一連の話を聞いてもらったことも大きい。悶々とネットに向かって、ブレたりブレなかったりの、この時間も大事だと彼女は言う。改めて”私”と向き合える。

”週五で働いて、気付くのもありかもね”と冗談っぽく彼女は言う。私が条件に掲げていない働き方をするのも、ブレていることの気付きになるのではというのだ。
そういう彼女は、行動も早いが、違うと気付いて、軌道修正するのも早い。

今のこだわりは、また別のことが優先されると、違うこだわりになるのかもしれない。
都度、自分の気持ちに向き合っていく。