2023-11-01から1ヶ月間の記事一覧

来世で会う

いつものアナウンスを、今日は聞き逃していた。誰かに押された私の体は、踏ん張っていられず、私も誰かを押していた。 今朝のことなど、すっかり忘れていた。夫が帰宅後の、最初の会話のやり取りを思い返していた。いろいろ考えていると、ふと車内の光景が蘇…

クラスメイト

テーブルには、マグカップが一つ、グラスが三つ置かれていた。 ちょうどおやつを食べるのに、相応しい時刻だった。いつもなら、デザートも注文するところだ。しかし今日は控えておく。昼食も、少なめに調整しておいた。 コートを着る季節になった。マグカッ…

予兆

誰かに呼ばれているような気がした。 訓練校の終了日以降の予定は、まだ決まっていない。 前回までのハローワーク来所日と違った点は、履歴書と職務経歴書の提出を求められたことだった。たいして書く内容もない、薄っぺらい書類を持参した。 そろそろ具体的…

三日月

やっつけ仕事のつもりはないが、結果そうだと言われても仕方がない。完成品に雑さが目立つ。締切厳守のなか、それがその時の精一杯だ。 何か課題が出るたび、完成後には反省をする。次は、全てではないものの、反省点の一部は活かしつつ、習ったばかりの新し…

木枯らし

買ったばかりのセーターを着た。季節外れの暑さから一変、冷たい風が体を包み込んだ。 押入の中を覗くと、げんなりした。何度片付けても、リバウンドする。奥に追いやられていた、ガスストーブを取り出した。その手前には、押入に収納してからまだ日の浅い、…

つもりで

引越に伴って、大量のごみが出た。引越後も、まだ後片付けをするために、引越前の住居に足しげく通う。連日の作業で、とても疲れている。 と語っていたのは、同じマンションの住人だった。彼女が引っ越したことで、また古株住人として、一つ昇格した。 彼女…

少しずつ

ビルの谷間から、オレンジ色の光が放たれている。上空の雲が色づいて、そこだけ異空間のようだ。土手に上がると、川の向こうのビルの群れが良く見える。 下流に向かってしばらく歩くと、向こうから遥子ちゃんが現れる。わりと早くから私は気付いていたが、手…

四半世紀前

家に着く頃には、もう日付が変わっていた。別れを惜しんで帰ってきたが、また近々会えそうな予感だ。 「お互い見つけられるか楽しみだね」「ほんと、それ」 数日前に、私から待ち合わせ場所の連絡をした。夜には賑やかになる、若者の街を指定したのは、都合…