2023-07-01から1ヶ月間の記事一覧

あとで

この頃、ベランダとその先の庭に、来客が多かった。私の気配を感じると、一匹は右に、一匹は左に、逃げ去るトカゲがいるかと思えば、こちらの気配など気にもせず、堂々としているカラスがいる。 姿を見せない鳩だが、ベランダにやってきているのは知っていた…

歩かず そして歩きだす

なにか、様子が違った。階段から見下ろす光景に、随分と人がいる。私は階段を下りきって、長い列の一番後ろに並んだ。 私の後ろにも人が並んでいく。しばらくして、私は列から抜け、先ほど下りてきた階段を上った。迂回をするか、時間潰しをするか考えた。上…

目的

いつもの指定席と違い、ゆったりと座って少し贅沢な気分を味わっていた。私の席の隣も然り、並んだ二席のうち、ひと席はどこも空いているようだった。しかし、次の駅で席は埋まってしまう。今日は金曜日だった。 五十になったら一人旅をしようと決めていた。…

折り返し

あと、どのくらいだろう。 スタートやゴールは、キリの良いところを設定する。月の初めや月の終わり、週の初めや週の終わり、ちょうど一週間だとか、十日だとか。期間だけではなく、時間もそうで、〇時になったら始めるだとか、〇時が過ぎたら、次は〇時半だ…

未知

「L」の英文字の発音が、「え・る」ではなかった。彼女はきっと英語が話せるのだろうと想像した。 机にはいくかの書類が並べられ、その一つに目を通した彼女は、「長いですね」と言った。 「ええ、半年あります」と答えた私は、もうここに来るのは四回目だ…

夏 到来

「暑い」と声に出せば余計に暑いのに、言わずにはいられないほど暑い。連日、気温は三十度を超えていた。 エアコンが欠かせないが、心地よいとは言い難い。夜の九時を回り、一度エアコンを止めて、窓を開けてみた。もわっとした生暖かい空気が肌に触れ、すぐ…

七夕

ラインで送られてきた一枚の写真をみて、今日が七月七日だったと気付く。グループライン内の会話を目で追っていると、写真の送り主は、有名な七夕祭りに行ったようだった。隣県の地名だったが、七夕祭りが有名だと初めて知る。後ほど調べてみると、日本三大…

心 踊る

ポストを覗くと、一通の封筒が入っていた。 *** 帰宅した途端、頭がズキズキしだした。体もとても疲れている。暑さのせいだった。いやしかし、それだけではなかった。 前日、夜遅くまで起きていた。自分なりの準備は、抜かりなくやったつもりだ。想定され…