なにか、様子が違った。階段から見下ろす光景に、随分と人がいる。
私は階段を下りきって、長い列の一番後ろに並んだ。
私の後ろにも人が並んでいく。しばらくして、私は列から抜け、先ほど下りてきた階段を上った。迂回をするか、時間潰しをするか考えた。
上った先の改札口で、遅延していた電車が、もうまもなく来るという情報を得た。私はすぐさま、ホームに続く階段を下りていった。
早く家に着きたい一心で、パン屋に寄ることをすっかり忘れていた。
夕食の食材は、冷蔵庫のもので足りていた。スーパーで提げているカゴに、これといったものが入っていないのは、それが理由だ。最後に忘れずに食パンをカゴに入れ、そろそろレジに並ぼうかという時だった。
視界の端にいる人が、私に近づいてきた。視線を向けると、そこには空っぽのカゴを持った遥子ちゃんがいた。
彼女が「どう?」と聞く。無論、職業訓練校のことだった。
遥子ちゃんとのウォーキングは、毎年、夏の間はお休みをしている。少し過ごしやすくなったら再開するのだが、今年はそうもいかなかった。
その上、今年はいろいろ出掛けようと春先に約束した。しかし、数回しか実現しないうちに、私が平日の昼間、身動きが取れなくなってしまった。
ただ遥子ちゃんは、これがあったからなんじゃない?と言う。
数回とはいえ、私の未来を予想してか、”いつか行こうよ”ではなく、確かに積極的に出掛けたのは事実だった。
今度、夕方に会おうと約束して、スーパーを後にした。