目的

いつもの指定席と違い、ゆったりと座って少し贅沢な気分を味わっていた。
私の席の隣も然り、並んだ二席のうち、ひと席はどこも空いているようだった。しかし、次の駅で席は埋まってしまう。
今日は金曜日だった。

五十になったら一人旅をしようと決めていた。
一人の帰省でさえ、何か目的があってのことで、しかも数えるほどだ。
純粋に一人で旅を経験したことがない。

そういえば同い年の友達が、一人旅をしたと言っていた。自分へのご褒美か定かではないが、三泊四日の長旅は、ちっとも寂しくなかったようだ。いや、私は彼女のように楽しめないかもしれない。一泊で十分だと思った。

道中、家族のグループラインで互いに途中の居場所を報告する。平日身動きが取れなくなった私は、夫と息子とは遅れて一人新幹線に乗っていた。実家に到着するのは夜になりそうだ。
まだ一人旅は実現していない。

もしかして私は片付けが終わるまで、一人旅も楽しめないのだろうか。

片付けの終わりのことばかり考える。このことばかりに時間を費やしてる場合ではないと頭では分かっていたが、今日は切に思う。

同じ空間で"学び“をする、年齢も様々な人達の人生のほんの一部を知る。

他人の経験は私の経験にならないが、”知る“もまた学びになる。