心 踊る

ポストを覗くと、一通の封筒が入っていた。

        ***

帰宅した途端、頭がズキズキしだした。体もとても疲れている。
暑さのせいだった。いやしかし、それだけではなかった。

 

前日、夜遅くまで起きていた。自分なりの準備は、抜かりなくやったつもりだ。
想定される質問の答えがまだふわっとしていて、それらを文章化するのに、時間がかかった。その後は、そらで言えるよう、何度も声に出す。

そして迎えた当日。
一つの狭い空間には、受付から、待機場所、面接ブースまで所狭しと設置されていた。

受付で渡された紙に記入する際、手が少し震えて、上手く字が書けずにいた。どうってことないのだと、さっきまで思い込んでいたのに、緊張していることを自覚する。

待機している間に、呼吸を整える。”次の方どうぞ”と言われる頃には、緊張は少し和らいでいた。

 

今日の日がずっと気掛かりだった。やはり気が張っていたのだ。どっと疲れが出た。その疲れた体をソファーに委ね、さっきまでのやりとりを思い返す。
少し早口だったかもしれない。あちらの質問に対する私の答えが、少し気になったところが二箇所あった。反省点はそれぐらいだろうか。頭はまだズキズキしていた。                            

        ***

私宛の封筒だと知って、ドキっとした。
発送の日は、今日だと聞かされていた。つまり、到着予定は二日後のはずだ。心の準備ができておらず、そわそわする。

普段なら、ひととおりの家事は済ませてるのに、午後の時間になっても、あちらこちらにモノが散乱していた。どうあがいても、封筒の中身は変わらないが、せめてきれいなところで開封すべく、食卓の上を片付けた。

レター用のカッターは、この頃、刃の切れ味が悪く、何度も往復させて、封を切る。
またこの時間がもどかしくもあり、余計に緊張感を高めてくる。

恐る恐る、三つ折りのA4サイズの紙を開く。
シンプルに合否が記載されているもの、ではなかった。一瞬混乱する。
合格とは、表現していなかった。

文の途中に、”受講者として決定”という文字があった。

 

これから、私の”学び”が始まるのだ。