変わりゆく

湿度を示す数値は最適とはいえなかったが、外から入ってくる冷たい風が、不快さをかき消してくれた。雑音のない夜の静けさに包まれていると、急に雨音が耳に入ってきた。みるみるうちに湿度は上がっていく。それでも夜風に当たっていたくて、しばらく窓を開けておいた。

季節の変わり目は、いつでも着る服がなかった。私が「ちょうどいい」と思える、羽織りものがない。去年は何を着て過ごしたのだろう。少し季節を先取りした衣を身にまとい、街を行き交う人々は、私の存在に気にも留めない。なのに、サンサンと降り注ぐ太陽の光に惑わされて、真夏の恰好で歩く私に「季節外れ」を実感させる。そろそろ、衣類がパンパンに詰まったケースの中身を確認しておく必要があった。

 

年末がまたやってくるのだと思うと、憂鬱になった。まだ先の話とは到底思えない。自分の思うようにならない苛立ちは、一昨年まではそれなりに理由があった。しかし、パートを辞めて最初の年末を迎えた昨年は、十分時間があったはずなのに例年どおりバタバタした。

やることが山ほどある日常も、それ以上にやらなければならないことが増える年末も、嫌だった。季節がめぐるように、同じことを繰り返すのだろうか。

 

「ねぇ、みぃ。もう終わりにしたい」

『せやな、もう終わりにしよ。ゆめ子さん、‘’終わり‘’いつにする?』

「う~ん、年を越すのはいやだな。でも無理かな」

『ほな、年末な。年末ゆったりしたいんやから、もうちょい前、今から三ヶ月後な』

「三ヶ月後?」

『大丈夫やで。少しずつ、気持ちも行動も変わってきてるしな』

正直、三ヶ月なんて足りないはず。けれど何かを決めなきゃ、それに向かうことはできない。みぃが決めたけど、それは自分が決めたこと。
もう一度、今晩、夜風にあたって、背中を押してもらおう。