順次、家の外へ

別れの日がやって来た。
最後に”ありがとう”と抱きしめた。

 

息子と娘には、とうに承諾は取ってあった。
洋室のソファーの、しかも座面ではなく背もたれの上に鎮座していた彼らは、子供達の承諾を得てからは、私の部屋の隅へと移動していた。それから随分と長い間、そこに居た。

二体のぬいぐるみを並べてサイズを測る。
近くの薬局で、ダンボールを調達するつもりでいた。もしなければ、そのまま郵便局に出向いて、ダンボールを購入すると、段取りした。
遠出してまで、無償で手に入るダンボールの調達をする選択肢をしなかったのは、天気が不安定なせいもあったが、今日の午前中のうちに、荷造りと発送までを”やる”と決めていたからだった。

調べてみると、郵便局で販売しているダンボールはサイズが足りず、ぬいぐるみ二体は入らない。しかし、薬局で手に入るとは限らない。商品の搬入やダンボールの回収のタイミングによっては、不要なダンボールが一つも置いていないことがある。

郵便局のページをスクロールすると、カバーというものが販売されていた。ゴルフバックやスキー板、他にはボストンバックなどを包むものだ。
それを見て、ダンボールにこだわる必要がないことに気付いた。似たようなものを、今しがた捨てようとしていた。ファスナーが壊れたナイロン製の袋、結構大きいのでこれは使える。

寄付という形で、彼らはこの家から去った。

 


翌日、ごみ袋二袋分の可燃ごみを捨てた。今月に入って、合計五袋分は捨てたことになる。その一部は、捨てると決めてからも放置していたもの、もしくは、使ってもいないのに、何度片付けても引き出しに戻されているものだった。

片付けは簡単なこと、と言い聞かせるのは、少し効果があった。

台所の引き出しから、使っていないキッチンバサミが出てきた。
これもまた、切れ味が悪くなったから捨てると決めて、そのまま放置されていたものだ。新しいキッチンバサミを手に入れて、すでに処分したつもりでいた。何より、毎日開け閉めしている引き出しに入っていたことに驚いた。乱れた引き出しの奥に、ハサミは埋もれていたのである。

Amazonの購入履歴を確かめてみる。
新しいキッチンバサミを手に入れたのは、2023年の4月だった。