こんな日

踏切の向こう側にいる女性が、知っている人によく似ていた。
勤務時間中にここに居るはずもなく、あまり見るのも失礼だなと、視線を逸らそうとした時、彼女は私に手を振った。似ているのではなく、本人だった。
上下線の電車が通り過ぎる間が、妙に長い。もう彼女だと分かってからの、踏切が開くまでの時間を持て余してしまう。その間、携帯電話に目をやった。ちょうど12時を過ぎたところだった。
なるほど、彼女は昼休みに自宅に帰ってきたのだと理解した。そういえばこの辺りに住んでいると言っていた。

 

前の職場で一緒だった昼休み中の彼女に、なんでここに居るのと聞かれ、百円ショップまで散歩を兼ねて歩いてきたのだと答えた。片道20分の距離をちょうど帰るところだった。
彼女と別れてしばらくすると、高齢の女性に声を掛けられた。

「今日は暑いですねぇ」五月並みの気温で、確かにとても暑い。すでに30分ほど歩いている私は、少し汗ばんでいた。

「そうですねぇ」と答えた私は、彼女に会釈をした。通りすがりの人、みんなに声を掛けているのだろうか。全く知らない人だった。

 

その先の、ちょうど十字路に差し掛かろうとしたとき、左手から来る自転車が視界に入り、気を付けようと意識した。

「ゆめ子ちゃん!」

自転車に乗った樹希ちゃんと、出会い頭に会うタイミングに笑ってしまう。

 

家に帰ると、少し頭痛がした。暑かったからか、花粉のせいなのか。夜、友達と会うまで時間は十分ある。それまでには治まるだろう。しかし、上の階の工事の騒音には参ってしまう。布団の中に頭を隠して、少し横になる。

この頃みんな揃うのは難しく、参加できる人だけで集っていたが、今日、全員が揃うのは珍しい。待ち合わせ場所まで自転車で行ける距離だが、迷いなく電車を選択した。帰りは雨が降るかもしれない。駅に近づくと、電車から降りてきたであろうたくさんの人とすれ違う。
その中の一人に、「..ちゃん!」と私を呼んだ人がいた。私を下の名前で呼ぶ人の方が少ない。苗字の頭にちゃん付けをした愛称で、彼女は私を呼んだ。

 

なんだか今日は人によく会う日だった。