春一番

待合室の椅子が足りないほど、混んでいた。
時間潰しに携帯電話を眺めるのを躊躇する。自覚のない症状が、悪化するかもしれない。確かにパソコンや携帯電話を使用する時間が、大幅に増えていた。目を酷使しないよう、パソコンの使用に制限がかけられたらどうしようか、と考えた。

 

結論から言うと、心配する症状はなく何でもなかった。
迷いなくここへ来たのは、家族が世話になったことがあるからで、自身のかかりつけ医がないことに、改めて気が付いた。

上下、左右と口で言う方向に、手も動かしていた。特に右と左が分からなくなる。
リズミカルに正解を言い当てるので、文字はどんどん小さくなる。学生の時ほどではないが、視力は何年も衰えない。他にいくつか検査を受ける。結果、健康診断で指摘された”疑い”は晴れた。

 

 

カランカランと、物音がした。何かが風に煽られ、落ちたようだ。
ゴーゴーと音を立てる風は、窓を閉めた部屋の中まで聞こえてくる。三寒四温という言葉のように、暖かくなったり寒くなったりを繰り返し、春の訪れを知らせてくる。
しかし、手離しで喜べない。先日から花粉症の症状が少し出始めている。なるほど、眼科が混んでいた理由は、そのせいかも知れない。

 

寒い冬の次は、花粉、梅雨ときて、暑い夏が来る。一年を通して、いろいろと付き合わなければならない。それを動きが鈍くなる言い訳にしていたら、結局、いつまで経っても動けない。ただ嫌なこと、苦手なことに向き合うことに億劫なだけである。

何かに制限が掛けられる前に、動けるうちに動いた方が良い。いろいろと考えさせられる健康診断の結果は、良いきっかけとなる。