地図

スマホが表示する青い丸は、私と共に動き出す。
青い線を描いている道順とは、反対方向へ。

いつもそうだった。駅を降りてから目的地へ向かうのに、右か左か分からない。
グーグルマップだけではなく、ストリートビューも見ておくべきだったと、後悔する。

今日はこの駅に到着するまでも、予定通りとはいかなかった。検索した電車に乗っているつもりが、途中から止まる駅の名が異なっていた。

帰りは帰りで、気が気でなく、何度も携帯電話の画面を確かめた。
ようやく自宅の最寄駅に到着し、再び携帯電話を見て”大丈夫そうだ”と安心した。しかし、改札のタッチパネルに携帯電話をかざすと、警告音がなった。
携帯電話の電池の残量は1%だった。

 

連日外出していた。慣れない場所へ出向いて、疲れているのは間違いなかった。
しかしその分、実りはあった。


複数の選択肢は迷路のようで、迷子になりかねなかった。目的地をはっきりさせないと、似て非なる場所へ案内されてしまう。
選択肢の分だけ、辿り着く場所があり、同じではないことを知る。
私が求めているものが、少しずつ明確になっていく。

 

与えられた地図では迷ってしまう。そうであるなら、自分で描けばいいのだ。
描きたいことが、たくさんあった。
”片付け”は終わっていないのに、楽しいことをずっと考えていられる”私”がいた。