一会といわず

地面の斑点模様を見て、雨だと気付いた。降り始めの雨よりも、結構風が強いことが気になった。

近くの土手から花火が見えるのを期待して、娘が実家に帰ってきた。
息子を誘ったが、行く気はなく、夫と娘と、三人で家を出た。

雨にあたらぬよう、高架下で腰を下ろす。遠くで上がる花火は、まだ先に進めばもっと大きく見えるが、ここでも十分だ。

 

今年初めて花火を見た。
花火玉の中身を覗いたとしても、よく分からないだろう。様々な形の花火に、素直に綺麗だと感想を抱き、どうしてあんな風に上がるのだろうと不思議に思う。

 

 

ラインの履歴をみると、彼女との前回のやり取りは三年前だった。
彼女は、私がパートの仕事を辞めたのを知らなかった。もちろん私も、彼女が心残りだったことを、二年の歳月を経てやり遂げていたことを知らなかった。娘の同級生のママである彼女とは、子供達の学校が別々になってから、会う機会が減ってしまった。

会おうと言葉を交わしても、時に、また今度で済ましてしまい、曖昧になる。しかし、翌週には、日時と場所を段取りしてくれた、彼女からのラインが来た。共通の友達と共に、会うことになった。

彼女が連絡をくれた理由には、きっかけがあった。いつか会おうが、永遠に実現できないことがあることを、私達は知っていた。

 

 

夏の風物詩というには、季節外れだ。肌にあたる風が冷たかった。
まだ上がり続ける花火を後に、冷えた体を丸めながら、自宅へ戻った。

実は、少し前にもこの辺りで花火が上がっていた。大きな音で気付いたのが、外にも出なかった。この日も見に行けば良かったなと、少しだけ後悔した。