きっかけ

いつになく、遅くなった。
多少遅れても、お互い良しとしていて、連絡などしない。
しかし今日ばかりは、「ごめん、今向かってる」とラインをした。

ついさっきまで、時間に余裕があった。同じリズムで刻んでいるはずの時間が、急に時計の針が進む。
彼女との久々のウォーキングに、準備に掛かる時間配分を誤ったようだ。

「私も、まだ着いてないよ」と彼女から返事が来る。

連日の強風で、もう散ってしまったであろう桜の様子も気にせずに、話に夢中になる。今日は寄り道をして、もっと話を弾ませる。

 

 

和室に入ってすぐのところに設置したラックは、確かに邪魔だった。しかし、洗面所で圧迫感を放っていたこのラックは、和室で使う方が、幾分良いと思われた。

毎朝、あちらこちらから、夫の着替え一式を集め、ダイニングに移動させるという、なんとも無駄な動きを改善したかった。会社に着ていく服をまとめるのに、このラックを利用する。ここで、夫の着替えが完了するというのが、理想であった。

しかし、ラックを導入してから日が経つというのに、「今日、会社に着ていく服」を、ダイニングに移動させている、朝のルーティンは変わらなかった。

それには、理由がある。ラックに掛かっているカッターシャツの中で、アイロンしているものと、そうでないものの区別をして、またそれを一目瞭然で夫が分かるようにする必要があったからだ。それならと、ダイニングに持って来ているのが現状であった。

 

先月、旅行の帰りに実家に寄った私は、自宅を一週間も空けた。
留守の間、夫はラックの前で着替えをする。どのカッターシャツを取っても、すべてアイロン済みである。

アイロン済みのカッターシャツだけ、ラックに掛ければ良い。アイロンが終わっていないカッターシャツは、ラックに掛けなければ良い。アイロンの終わっていないシャツの置き場所もないので、結局は早々にアイロンをする。

少しずつ、整ってきている。
私が自宅に戻ってからも、ラックの前で着替えをするようお願いした。

 

次に彼女に会うときは、余裕を持って準備をしよう。朝のルーテインワークが減ったのだから。