秋晴れ

「さむっ」
寝床に入りながら、思わず声が出る。娘もよく言っていた。

 

雲一つない空だった。
夏にはプールが広げられていた保育所の前には、一台のカートが置かれていた。
その中には、小さな子供が4~5人乗っている。これから外へ出掛けるようだ。しかし、まだ出発できずにいた。一人、先生の膝に乗って、なだめられている子がいる。

午後になっても、ビルの窓から覗く空は、雲一つなかった。
あの子は、みんなと一緒にカートに乗ったのだろうか?

 

以前寝床にしていた和室とは、室内温度がやはり異なるようだ。
部屋に入ると、ひんやりとした空気に触れた。昼間の心地よさは一転し、夜になると随分と冷える。

娘から譲り受けた部屋で、この秋、初めて過ごす。これからやって来る冬の夜は、また一段と寒いのだろうなと想像する。

 

寝床にいくまでは、大概洋室で過ごす。この洋室にある、息子から譲り受けたパソコンを触っていることも多い。散らかり放題で溜まる一方のファイルも、十分に保存できるほど容量も大きく、特に困ったことなど一度もない。寧ろ、モニター代わりのテレビ画面は、大きくてよく見える。それに、老眼鏡いらずが利点だ。

時折、家での作業も集中力を欠くことがある。この部屋はダイニングに隣接している上に、ドアを取っ払ってしまっている。シーンと静まる環境ではない。

 

ノートパソコンの文字が頭をよぎる。
自室に籠るには、必要ではないか。老眼鏡を掛けざるを得ないことは分かっている。もちろん、とても寒い部屋だということも承知だ。

自室だけに留まらず、外にも持ち出せる。
まだ手元にないパソコンで、作業している自分を想像した。