大人の靴屋

「どこに置いたっけ?」

週末、家を空ける前はそこにあったはずだ。しかし見当たらなかった。

 

洋室にあるソファーと長椅子の上には、丁寧に畳まれた洗濯物が仕分けされていた。
畳み方と、仕分けが、いつもと少し異なった。

それらの洗濯物と、洋服を収めている引き出しを何度見ても、手持ちの服が増えるわけではない。何を着ようか、いつも決めかねる。

結果、一昨日と同じ服を着ていることもしばしばだ。すぐにターンが回ってくる服の上から羽織った上着は、教室に到着後は椅子に掛けられたままだ。
外が窺えない窓は、ロールカーテン越しに陽射しを感じとる。

週末の長旅の疲れが、まだ残っているのだろうか。それともこの季節のせいだろうか。
午後は、とても眠くなる。

 

ソファーと長椅子に並べられた洗濯物を、それらが収まるべきところへ持って行く。
誰かの下着でもなく、ハンドタオルとも様子が違う、四角く畳まれた何かが目に入った。

「あ~、これだ」
捜しているものが、見つかった。

いつもは取り込んだ洗濯物の山に紛れ込んでいて、それらはくちゃくちゃっと、その辺りによけられている。息子は洗濯ネットまで丁寧に畳んでいた。

 

 

「うちは無理やからなぁ、ゆめ子さん」

「そらそう。みぃは心の中の私だからね」

 

部屋を片付ける、掃除をする、料理をする、洗濯をする、訓練校の課題をする、授業のノートをまとめる、など。

人手が必要だった。残念ながら、みぃは小人の靴屋にはなれない。