健やかなるとき

お茶を飲み干したガラスコップに、水を注いでから随分時間が経っていた。食卓に置かれたガラスコップのそばに、「小さな石」の倍の大きさはある固形物が二つ。食事はとうに終えているのに、最後に口に運ばなければならないそれだけは、ずっとそのままだった。

たかが4㎜、されど4㎜、たった一つの「小さな石」は私を苦しめた。ベッドで横たわる私は、先生の話に頷くのもしんどいほど非常に弱々しかった。それでも、病院にいるというだけで、大きな安心感がある。食前に服用する漢方薬を処方するかどうか、私の判断に委ねられた。食後の薬もあるのに、食前に漢方薬まで飲むのは大変だろうとのことだった。とにかくなんでもすがれるものなら、すがりたい気持ちで、即答で処方をお願いする。漢方薬は苦いし、一回分の顆粒の量も多く、上手く飲めた試しがない。それでも、食後に飲む薬よりは躊躇なく飲める。とにかく錠剤を飲むのが苦手だった。

あの日、いつもと違う腹痛に襲われた私は、尿路結石と診断された。
⦅腰痛と吐き気もあってんな⦆

        ***

娘は「片付けもダイエットもしなくていい」と私に言う。いつまでもやってる「片付け」と、いつになっても始めない「ダイエット」。誰も困っていないし、そこに費やす時間がもったいないと思っているようだ。
ただ片付けられていない部屋は、物の出し入れ、動線がスムーズではない。娘が困っていないのは、家事の手伝いをする機会が少なく、最適な場所に収納されていないことに気付いていないからではないのだろうか。誰もが家のことをスムーズにできて、ストレスなく過ごせる空間にしたい。やはり「片付け」は必要だ。
「ダイエット」、いつも口だけだった。ダイエットはせずとも「健康」は意識したい。大事には至らなかったが、今回のことはいいきっかけとなる。何気なく、手をあてたお腹をみて、溜息をつく。やはり「ダイエット」は必要だ。
⦅腹痛のとき、服もきつくて苦しかってんな⦆

確かに「片付け」と「ダイエット」ばかりを気にする生活はしたくない。もうこの言葉を発しない日がきたとき、心身共に健やかなるときがきたと言えるのかもしれない。