「正」の字を二回書けば、一日のノルマは達成だ。最後の一画を書き終えると、もう0時を回っていた。
計量カップで量った200mlの水は、マグカップに移し替えると、思った以上に注がれる。それを目安に、毎回並々とマグカップにお茶か白湯を注ぐ。一杯飲み干すごとに、「正」の字を書くのが、専ら最近の日課である。
8月のある日、腹痛と腰痛に見舞われ、尿路結石と診断された。その後は一切なんの症状もない。とうに石は排出されたものだと疑わなかったが、実はまだ私の体の中にいた。
医者に一日二リットルの水分補給を指示される。それに加えて、三度の食事のあとの薬も処方される。
年末が差し迫るなか、年内に達成すべき目標が新たに加わった。
「石を体内から出すこと」
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奥歯のさらに奥の方が痛い。次の日も、やはり次の日も、と数日続く。虫歯を疑って、歯医者へ行く。口を開ける、閉じるを繰り返し、痛みの場所が、顎の関節だと判明する。
「ストレスによるもの」先生の言葉に、キョトンとする。心当たりはなかった。
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なんだかんだで、病院に行く日が多い。次の予約を取るものだから、当初の予定より青いノートは埋まっていく。片付けは計画通りにいかないものだ。時々、進捗具合を確認して修正を加える。年内に整うところまで無理でも、せめてこれだけは済ませたい。
「不用な品を家から出すこと」
夕食後、薬のあとの口直しを考えながら、錠剤としばらくにらめっこする。「正」の字は、寝るまでにあと三回、マグカップに湯を注えば、完成する。
この生活を始めて、すでに十日ほど経過する。これらはまだしばらく続く。
もしやこれが「ストレス」なのかもしれない。