ルームツアー

ペンキで塗装された玄関のドアが、いかにも昭和に建てられたマンションだと言わんばかりだ。どこに置いてもぴったり収まらない既存の下駄箱が、のちに購入した棚の開閉の邪魔をする。あふれる靴に困り選んだこの棚は本来下駄箱ではない。靴は水平に置けず傾けて収納する。奥行のないスマートさと観音開きの扉の可動域がアンバランスだった。
背表紙が見えるように単行本とCDが整然と並べられた、腰の丈ほどの棚の上には外出時にはかかせないマスクが置かれていた。隣には私の背丈よりも大きい本棚があり、少しの本と梅酒や工具、折り畳み傘など目的が様々なものがぎゅうぎゅうに収まっていた。
玄関を上がって左手にあるこれらの棚は部屋の模様替えの末、邪魔者になりここに運ばれてきた。右手にはミニマリストを目指す娘の部屋がある。いらなくなったものが時折玄関に出されていて、今回は二段ボックスだった。行き場がなく放置したままになっている。

玄関だけでも片付けられない「私」を知る手がかりがあふれていた。

正面のドアを開けると、客人を迎えるには相応しくない掃除機とゴミ箱が鎮座し、その背には横を向いた冷蔵庫がそびえ立っていた。ダイニングキッチンには冷蔵庫のほかに食器棚が二つ、食卓にイス、炊飯器を置くためのキャスターがついた小さな台がある。窓際には木製の棚が三つ並び、そこには電子レンジやトースターなどキッチンに関連付いたもののほか、テレビやプリンターも置かれていた。
水蒸気が出る炊飯器は換気扇の近くに置くというルールのもと、ガスコンロの前で稼働する。炊き上がったら少し横に移動させるが、その位置が電子レンジの扉を開けづらくさせていた。

六畳の洋室。テレビ台の右側に直置きされたパソコンはテレビ画面をモニターにしていた。こたつ机の上でキーボードを打つ。カーペットの上に座る私の背にはソファーがあたっていた。テレビ台の左側には本がぎっしり詰まった棚が二つ並んでいた。
そういえばダイニングにはA4サイズの引き出しが食器棚とちょうど同じ高さに重ねられている。洋室に中途半端に置かれている同じ引き出しをみて、高さを合わせるために余ったものなのだと思い出した。
引き出し型の衣装ケースは夫と私で六つずつ割り当て、衣類を収納していた。私の引き出しのうち二つを犠牲にして別のものを入れることを優先したら、案の定、残りの引き出しは衣類でパンパンになってしまっていた。

六畳の和室。湿った洗濯物を干すためのハンガーラックにはいつしか洋服がかかっていた。万年床の布団はこの部屋の押し入れには入らない。随分前に夫関連のものを集めて壁際に置いたはいいが、その後が決まっていない。そこには息子の部屋の押し入れ収納から追い出された、レゴが入ったプラスチックケースも置かれていた。

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『ゆめ子さん、なんか気に入らんねやろ?中途半端になってしもてるもんな』

「だからね、みぃ。三ヶ月くれたら、、、」

『無理やて』