一人になりたい

今朝はいつものルーティンとは違う。

洗面所にまず向かう。
水道のレバーは青色ではなく赤色の目印が付いた方に向ける。蛇口から出る水にしばらく手をさらしてから洗顔をする。
電動歯ブラシは一分が経過すると音で知らせてくる。そのタイミングで磨く箇所を変える。毎日寸分違わぬ歯磨きの時間は少し苦痛になる。
洗顔と歯磨きが終わるとすぐに着替えた。

やかんに火をかけながら、何を飲むか考える。
朝食はまだいらない。お腹が空いたタイミングでいつも食べる。
カップに湯を注ぎ、ハーブのティーパックを入れたまま口に近づける。
「片付けの終わり」を考えるとワクワクした。

4DKの間取りは夫婦の寝室である和室、息子の部屋、娘の部屋、洋室、ダイニングキッチン。洋室はテレビとソファーなどがあり一見リビング的ではあるが、その機能は果たしていない。
子供達の部屋以外を片付ける。ただ息子の部屋にある、押し入れ収納は片付ける必要があった。
ハーブティーを飲み終えたら、朝のニュース番組もみないで早速片付けを始める。

ここを片付けている途中で、あそこを片付け始める。
あそこを片付けている途中で、向こうを片付け始める。
転々とすることもある。
そうかと思えば、一箇所が終わるまで集中する。いくつか分類してから移動すればよいものを、一つ一つ仲間のところへ持っていく。

片付けられない「私」は、例え要領が悪くても、必要かどうか判断するのに時間がかかっても、いろんな方法で飽きずに「片付けの終わり」が来るまで、ずっとずっと片付けを続けたい。家中全ての整理整頓、家具の配置換え、大掃除まで終わるには時間がかかる。
「心を落ち着かせ、誰もいない静かな空間で、時間を気にせず」片付けられる期間が三ヶ月必要だった。今日から三ヶ月、夫も息子も娘も家を留守にする。

夫が帰宅する前に和室の寝床を元に戻す必要はない。
息子の部屋を何度出入りしてもノックをすることもない。
娘がビデオ通話中かどうかも気にすることもない。
食事の時間も気にしない。
トイレも洗面所もお風呂も被ることはない。
夜中の3時まで起きていても構わない。

心の中の私、みぃと二人でひとりごとを言いながら一人で片付ける。
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『ゆめ子さん、これ妄想やん。家族が三ヶ月も留守になるわけないやん。気持ちは、よう分かる。いつでも片付けたいって思てるからな。片付けに没頭したいねんな』
「みぃ、やっぱり非現実的すぎたね」