モーニングルーティン

もうすぐ枕元で6時30分を知らせる音が鳴る。その前にアラーム機能を解除し携帯電話の今日最初の仕事を奪い取る。
再度目を閉じる。このまま深く眠ってしまわないよう意識を保ち、しばらくして体を起こす。電池の残量が心許ない携帯電話をダイニングにある充電ケーブルにさす。
うがいがしたい。洗面所に向かい水道のレバーに触れる前にトイレを済ませる。手を洗ってから、まだ温かい温度になりきっていない水を両手に貯める。

代わり映えしないふりかけをふって、おにぎりを2つ作る。水筒にお茶のティーパックを垂らしやかんから湯を注ぐ。
デジタル時計をちらっと見る。ダイニングにあるテレビをつける。YouTubeを観た形跡が残る画面をNHKのチャンネルに変え、音量を上げる。コップに牛乳を注ぐ。
時計を時々確認しながら6時40分、夫に声を掛ける。
同時刻、夫の枕元にある携帯電話のアラームも鳴る。私が起きる前に最初の音を鳴らし、最終アラームの時刻に起こす。

お茶のティーパックをゆのみに移し水筒の蓋を閉める。おにぎりを巾着に収める。
夫が牛乳を飲み終えシャワーを浴びている間に次の準備をする。
和室の壁面にジャケットとスラックス、ハンガーラックにはカッターシャツ
洋室の引き出しに靴下とハンドタオル。
玄関に不織布マスク。各場所から取ってきてダイニングのイスとテーブルに置く。
おにぎりの入った巾着と水筒も。
玄関に行ったついでに今日履く靴を出しておく。

夫を見送ったあと、テレビの音量を下げる。
青いノートを広げ今日することを確認する。ゆのみでお茶を飲みながら、ここには書いていないことを雑用紙にメモをする。

脱衣かごを覗いて洗濯する物を分けて1回目を回す。
水切りカゴにある食器を棚に戻す。重なった皿の種類が違うのを見て見ぬふりしてその上に重ねる。
食器を洗う。何かしらシンクに洗い物がある。
昨日取り込んだタオルと夫の洗濯物を畳んで収納する。息子と娘の洗濯物はまとめておいて置く。私の物は丸めてポンと引き出しに突っ込む。
1回目の洗濯物を干す。2回目の洗濯をする。洗濯物が多い日はまだ続く。脱衣かごが空になるまで繰り返す。
途中空腹を感じたところで、一度消したテレビを再びつけて軽く朝食を食べる。
狭い洗面所をうろうろしながら電動歯ブラシで歯を磨く。
二度手間を後悔しながら髪を洗う。お風呂で洗顔する。
ぎゅうぎゅうの引き出しから適当に服を選んで着替える。
玄関とは真逆のベランダから箒を持ってきて、たたきを掃く。
娘がビデオ通話をしていないか確認して掃除機をかける。

毎日同じなのに雑用紙にこれらの家事をメモすることがよくある。テンポよくこなせないときには一つ一つ赤線で消してやり遂げる。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

『これは妄想じゃなく現実の朝の日常やな。な~んかゆめ子さんの行動って感じやな。改善せなって思いながら、これが習慣化されてしもてるな』

「みぃ、改善したいよ」

『改善するためにも労力がいるんよな。なかなかできひんのも分かるねん。夫さんの準備やけど、いろんなとこから集めてこんと一つのところに置けばええやんってな。まぁ思うわな』

「和室の一角に通勤準備の一式を置きたいんだけどね。どうレイアウトすればいいのかなって」

『システムを作ってしまうと楽やねんけどなー。他にも前の日にやっといたらなって事ようけあるしな』

「夜遅くお風呂に入るからそのあとドライヤーするのがねぇ。濡れたまま寝ちゃうことになる。だから髪だけ朝洗う。睡魔に負けて夕食時の食器が残ってる日もあるし。全部洗い終えてもその後食器が出てたり。洗濯物もその日のうちに片付けたり、前日に服を決めてたりってことだよね」

『まぁ、そやな。いつも思てる全部を片付けてしまいたい気持ちも分かるねん。そうしたら解消されるやつもあるやん。でもほら、そうちゃう日々のこともこれで見えてると思わん?』

「ほんとだね」