久方ぶり

歩道の脇に、数えきれないほどのどんぐりが落ちていた。”どんぐりって秋だよなぁ”と素朴な疑問を抱いた翌日には、もう落ち葉と共に一掃されていた。
制服を着た学生と保護者の二人組とすれ違う。ここのところ、よく見かける光景だ。恐らく、受験生だろう。

 

五十年も生きてきたと言えば、何か一つぐらいは武勇伝が語れそうだが、何もない。長い人生経験と言えるかもしれないが、たった五十回、春夏秋冬を巡っただけだ。
しかし、その間に、学生だった私は受験を経験し、母となった私は息子と娘の受験も経験した。

 

先日、短大の友達から電話があった。
互いに「十年ぶり?かな?」なんて言ったけど、適当だと思う。

彼女とは、新年の挨拶をグループラインでしたばかりだ。電話の声は久しぶりだったが、話す様子もちっとも変わらない。彼女も昔から電話番号は変わっていなかったようで、私の携帯電話には、昔登録したままの彼女のあだ名が表示された。

声を聞いたのは、彼女を含む短大時代の友達と会った時以来だ。それが十年前なのか定かではない。しかしその時、東京から待ち合わせの大阪まで行くのに、子供を連れていなかった。東京で夫と留守番をさせていたことになる。子供がすごく幼い頃というわけではなさそうだ。

東京に来てから、一人で帰省をしたのは、三回だと記憶していた。彼女達と会った時のことを入れると四回になるのに、忘れていた。たった四回か。
この頃は全員揃わないこともあるが、もちろん家族での帰省は年に一度はある。一人で気軽に帰りたい時には帰れずに、ようやく身軽になったのに、帰りにくい事情ができるとは皮肉なものである。