新年のご挨拶

彼の名を何度も呼んだ。姿を現さない彼を心配した。
部屋をぐるりと歩いても、彼の姿はなかった。
私が訪ねていくと、必ず出迎えてくれる彼が、今日は居ない。

私が彼を探す様子を、彼は上から見下ろしていた。
ようやく、彼がキャットタワーの上に居ることに気付いて、安堵した。
今年最初の顔合わせがこれである。

 

相変わらず、ご飯を用意すると、彼はすぐさま食べ始める。私が来なかったら、困ったでしょう?と心の中で呟いた。彼女の方も相変わらずで、まるで置物のように、窓際で微動だにしない。彼女は、すり寄ってきたことがないので、撫でてあげたことがない。

瑠海さんから言付かった手紙を、読み直す。やり残したことがないことを確認する。
つい先ほど、最寄駅でお手洗いに行ったばかりだったが、留守宅のお手洗いを拝借して、瑠海さんちを後にした。

 

瑠海さんに伝えるのをすっかり忘れていた。最後のトイレットペーパーを使い切ったのは私だということを。トイレットペーパ―の補充は重要案件だが、帰宅した瑠海さん一家の間で、もめ事になってなければ良いのだが。

 

 

 

順番に回ってくる当番は、もうこれで最後だった。
授業の合間に書き終えた日誌には、数人の欠席者の名があった。彼女達に、まだ新年の挨拶をしていない。
二週間後には、今度は別れの挨拶をすることになる。訓練校の修了が近づいていた。

修了間際まで、課題の制作があった。
まだまだ勉強が足りていないことを痛感する。自身のメモを読み直す。やり残していることがあることを確認する。
今できることは、なるべくやっておきたい。

もう日付も変わろうとしていた。
パソコンはまだ電源が付いたままだった。