鈴が鳴る夜

教室の後ろが少しざわついた。今しがた、先生が張り出した紙を見て、クラスメイトが声を漏らしている。
何も25日に被せて来なくても良いのになと、私でさえ不満を漏らした。

 

 

休み時間、後ろの席から聞こえる話に、私も加わった。聞くと、大きさも形状も、それぞれ違った。しかし、今年最後のイベントを楽しむために、皆、準備をしているようだ。うちのはこれぐらいと、手の平を下にして、高さを示した。「もう処分して、ないんだけど」と枕詞をつけた。
年に一回、天袋から出し入れするたび、もみの木の葉が散っていたツリーは、もう我が家にはなかった。

 

 

彼女の家にも、ツリーがあった。
存在感のある大きなツリーだった。それでも部屋を圧迫することなく、きれいに整った部屋に飾られていた。

夏の終わりに、近所に住む咲希さんと偶然会ってから、三ヶ月も経たないのに、今までの頻度を越してよくすれ違った。ぜひうちへ、と誘ってくれた彼女の家に、お邪魔する。

先客が居た。食卓の奥にちょこんと座る彼女は、よく知る樹希ちゃんだ。彼女の横に腰を掛けた。続いてやって来た深和ちゃんは、私の向かい側の席に座った。深和ちゃんが、私の背に見える夜景に何度も感動するので、その度に私は振り返った。いつも土手から見ている、川の向こう側にあるビルの群れが、また違って見えた。

 

 

 

デートのために休むと言っていた隣の席の彼女は、早速、面談の日をクラスメイトに代わってもらっていた。張り出された紙には、すぐさまボールペンで、交代する二人の名前が両矢印で結ばれた。

我が家のクリスマスは、イブの日に簡単なそれっぽい料理を、食卓に出す。生協で頼んだメインのチキンはすでに調理済みで、咲希さんちの食卓に並べられたお料理とは程遠い。

翌日の25日は、隣の席の彼女と違ってクリスマスを楽しむような予定はない。
ただ、私もまた、その日が面談の日だった。