視点

向こうから来る男性に「おはようございます」と声を掛けた。
私の隣で歩く友達も、よく彼に会うものだから、すっかり顔を覚えたようだ。彼は我が家の隣に住む年配の紳士だ。

私達は彼のことを、頻繁に会うと認識しているが、彼の方は違う。彼からしたら、たまに会う”私達”なのである。
週に一回ウォーキングをしている私達と、毎日ウォーキングをしている彼との違いである。

 

日曜日に一言だけラインを送った母に、今日は電話をしようと決めていた。
母の仕事が休みだったことに加え、家に一人で居ることを知っていたからだった。直接電話することはせず、念のためラインを入れた。

すぐさま、母から電話があった。
近況などを聞いたあとは、いつも同じ話題になった。

最後には母は私に申し訳ないと言う。
だが、私はそんな風にはまったく思っていなかった。
母はそう思わざるを得ない環境にいて、同居人と比較しているだけだった。

 

とあることがきっかけで、他者から見える”私”に、他者と私の間の関係性で生まれる感情もあるのだと、考えさせられた。客観視ともまた異なる。他者の感情を知ることで、私自身を知ることになる。

 

私は”私”を知る、まだ途中経過にいた。