紫陽花

写真の中の私達は笑っていなかった。
その写真をみて、私達は大笑いした。

 

携帯電話をカメラ機能にして、その画面に、遥子ちゃんと私が収まるよう顔を近づけて並んだ。ぎこちなく、遥子ちゃんの右手の指がシャッターを押す。

遥子ちゃんが撮った写真は決して上手とは言えなかった。
人に任せておいて、その言いようはないが、だからと言って私が上手なわけではない。二人とも、写真を撮るときの口癖は「難しいよね」だった。

「私達、全然笑ってないんだけど」
「えっ? なんでこんな顔?」と言いながら、声を出して笑った。

そんなつもりはないのに、笑っていないどころか、寧ろつまらなさそうな顔をしていた。写真の撮り方の上手い、下手以前に、ニコリともできない私達に問題があった。
ただ、今日ここへ来た記録にはなる。数年後には、いつ来たっけ?なんて言っているに違いなかった。

私達のつまらない表情とは反対に、後ろに写る花は、とてもきれいだった。

 

 

紫陽花を見に行こうと誘ってくれたのは、遥子ちゃんだ。
有名な観光地へ足を運んだ。

あれほどの多くの紫陽花が咲くさまは、やはり見応えがあり、堪能した。

 

十分に満足した私達だが、もう一箇所、行きたい場所があった。
紫陽花がきれいに咲いているよと、友達が教えてくれていたのは、自宅から二駅向こうの公園だった。
遥子ちゃんといつもウォーキングをするコースに、ほど近い。
ぜひ、次回のウォーキングでと思うが、忘れずに公園に寄ることができるかは、自信がなかった。