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クラスの何人かは、授業中イヤホンをしていた。
注意事項は、”音漏れはしないように”だった。

どうにも集中できない。曲や、その音に合わせた歌詞を聴いてしまう。
先生からの注意事項は、私には無用だった。イヤホンをつける必要がないからだ。

 

制作期間中、各々机に向かって作業をする。音はない環境だったが、集中力は途切れる。作業量も多く、家での作業時間を足さないと、どうにも追いつかなかった。
それは、”人による”ものではあったが、私には授業時間外の時間が必要だった。

 

 

まだ作業途中ではあったが、見えてくるものがある。
その一つは自分の欠点が浮き彫りになることだ。
ここは職業訓練校なので、仕事に就くための学びをしているが、欠点をどう解消していくかも、技術だけではない学びだと気付かされる。
まだ見えない何かも、どれだけ身に付けられるかは自分次第である。学びたいことがたくさんあった。

先生に学べる期間に、より多くのことを吸収する意気込みで、卒業は一つの区切りではあった。区切りのあとは、休憩をしてしまいがちな私だ。今回は、一旦離れることなく、学び続けたい。”やったことある”ではなく、”できる”と言うのだ。

 

 

二つ前の席に座る彼女も、イヤホンをしている。しかも片耳だけだ。
先生も一緒になって探したが、失くしたイヤホンは出て来ず、それ以来、彼女は片方の耳にだけ装着していた。

ふと思った。ラインに気付かないことがあった彼女に、イヤホンを耳につけておくっていうのはどうだろう?ラインの通知や着信音が、耳元で聞こえないだろうか?

明日は、私の番だった。
お休みがちょっとばかり多い彼女は、心配するクラスメイトと私から、起きているかどうかの確認のラインを受信するのが日課になった。