日々

電車の警笛が鳴った。

ドアが閉まるというのに、小さな駅のホームには残る人がいる。
特急や急行が走る路線ではないので、この駅で後から来る電車を待つ必要がない。

電車に乗らなかった彼らに視線を向ける。
お父さんとお母さん、二人の前に小さな男の子がいた。男の子は電車に向かって手を振っている。
警笛は、運転士さんから男の子に向けた挨拶だ。

 

なんとも楽しそうだ。
訓練校に行く途中、ビルの一角にある保育所の前を通る。庭を備えていないその場所は、夏の日の間、表に小さなプールを出していた。無邪気に水遊びをする子供達の様子が覗える。

 

目を閉じると、すぐに眠ってしまいそうだった。
繰り返しの毎日のなかで、微笑ましい光景が目に入るのも束の間で、なんだか常に追われているような感覚だった。

食卓の上には、”忘れてはいけないこと”をメモした紙が、常に置かれていた。
思い出したら、すぐ書くようにした。寝る直前になって、思い出したときには、わざわざダイニングまで行って、暗闇の中メモをする。


翌日、メモを眺めていると、解読できない文字を見つけた。まぎれもなく、私が書いた字だった。