見上げた空には

昼間、外出した私の携帯電話は、マナーモードのままだった。夫からのラインがしばらく未読だったのは、それが原因で、もちろんその後の電話も気付かぬままだ。ふと携帯電話を手にして、ようやく夫からのラインに気付く。これから帰るということを知らせるスタンプの他に、別の事にも触れていた。その内容に、今の今まで気にも留めていなかった。そういえば今朝のニュースで言っていたなと思い出す。

いつもウォーキングをしている土手まで行く。年配の方や、家族連れなどすでに多くの先客がいた。皆、立ち止まって空を見上げている。私も知らない人の間に並んで、隣の人と同じ方向を見る。皆既月食のときは、いつも土手が賑わう。

夫は自宅の固定電話にも電話をしたと言っていた。皆既月食が始まるので、早く知らせたかったようだ。
確かに固定電話の呼び出し音は鳴った。意図して私は受話器を取っていない。相手を確認してから取るようにしているからだ。ナンバーディスプレイに対応していない固定電話は、留守番電話のメッセージの声を聞くまで、相手が確認できない。夫は留守番電話に切り替わる前に電話を切っていた。

家にいる時間が多くなって、知らない会社の営業の電話を取ることも増えた。電話を切ったあとに、多くの場合、不快な思いをする。解決策として、電話を取らないようにした。大概、留守番電話に切り替わる前に、切れてしまう。

夫は何度も電話をしたのにという。営業の電話の件とは異なり、電話に出なかったことが原因で、少しモヤモヤする。

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幻想的な月をしばらく眺めていた。なんだか引き込まれそうだった。