聖なる夜は

耳に入ってくる音は知らない曲だが、すぐにクリスマスソングだと分かる。予約受付中のケーキの見本はアニメのキャラクターが飾られ、昔買ったことがあったな、と懐かしむ。
買い物リストを片手にスーパーへ来たのだが、目的のものを探すのに時間が掛かってしまう。売場のレイアウトがすっかり変わっていた。
ぐるりと店内を回った私の目に映る景色は、チョコの入ったアドベントカレンダー、来年の干支の置物、しめ縄など、クリスマスとお正月が混在していた。

その様子とは裏腹に、外では学ランを手に持つ学生や、半袖の男性を見かける。今日は上着が必要のないほど暖かい日だった。

 

もう、我が家にサンタが来なくなって久しい。それでも、毎年クリスマスツリーを飾る。クリスマスを迎える直前に、慌てて天袋から下ろされたツリーは、洋室の端っこで存在感を放つ。
年を越す前ならセーフという謎のルールで、クリスマスを過ぎてもツリーは放置され、年末のバタバタしている時期にようやく天袋へ戻される。毎年繰り返しているうちに、一緒に飾り付けをしてくれる子供達が、隣に居ないことにふと気付く。もちろん片付けにも参加しない。とうとう去年の12月、クリスマスが来る直前にツリーを手放した。

ツリーはもうないのに、飾りだけがまだ天袋に残っていた。一度に手放せばよいものを、あれから一年近く経っている。自転車のかごに乗せて、ツリーを引き取ってくれたお店へ持って行く。

ツリーもないし、サンタからの贈り物もない。それでもクリスマスを少し楽しみたくて、生協でチキンを予約する。
クリスマスソングが集められたCDが家にあったことを思い出した。もうずっと眠ったままだ。これも手放そうか、いや、殺風景な我が家のクリスマスを演出してもらおう。