塵と山

予報通り、雨が降っていた。

家の中に居ると、余程強い雨でなければ雨音が聞こえない。ロールスクリーンを下ろしたままの部屋からは、外の様子が覗えなかった。

帰りは雨が止むのを知っていたが、折り畳みではなく長傘を持って家を出た。傘の柄に貼られた赤いマスキングテープは、迷わず手に取るのに役に立つ。

 

電車で通う日々も、あと一ヶ月と少しだった。
頭の中に蓄積される知識と比例して、レシートも財布の中で溜まっていた。

いつぞや紙類から解放されたはずだった。しかし、レシートを含む紙類は、財布の中だけでなく、部屋にあちらこちらの紙袋に大量にあった。

些細な行動を怠ると、溜まっていく”何か”を片付けるのには、とてつもなく時間がかかる。日々、溜まらぬうちに”何か”をこなすことの方が、良いとは分かっている。しかし、”少しずつ”が複数集まると、それなりに時間は取られる。少しずつの”何か”は後回しにされていく。

 

 

迷わず傘を手に取って、教室を出る。次の予定が差し迫っている教室を、皆早々に後にした。いつもは避ける急坂を上り、最短ルートで駅へ行く。ホームの電光掲示板は、見慣れない出発時刻が表示されていた。


いつもより二本ほど早い電車だった。時間が作れたということは、こういうことなのか。いやしかし、一分一秒、忙しないのも嫌である。