前を歩く三人は、よく見ると揃いのジャージを着ている。私と同じ目的ではなく部活仲間だと気付いた。この駅で降りた人は結構いた。だが同じ方向に歩く人は数人で、すぐに一人になった。大勢の人がぞろぞろと会場へ向かっていく様子を想像したが現実は違った。
グーグルマップを開いて案内通りに足を進めた。少し先の曲がり角にスーツ姿の男性が立っている。案内板のようなものを持っているのが目に入った。会場へ行くのにあの角を曲がるのは間違いないようだ。
もう少し体をこちらに向けてくれると良いのにと曲がり角で案内板を覗くと、そこには新築物件の情報が載っていた。
今日を迎えるにあたって、時々逢衣子さんとラインのやり取りをした。試験直前には、本番当日に備える具体的な内容が交わされた。
彼女は鉛筆かシャーペンか迷っていた。私は鉛筆を選択した。当日使用するものを数本ピックアップして同じ鉛筆で練習問題を解くようにした。間違った答えは鉛筆で二重線を引いて書き直していたが、消しゴムを使うようにもした。
彼女は数か所の図書館とファーストフード店を利用して勉強していた。椅子ががたついて不快だったが、本番もそういうことがあるかもと受け入れていた。机と椅子の高さは場所によって違う。場所を変えて勉強するのもいいかもとアドバイスを受けた。
ちょうど試験直前に近くの図書館が長期休暇に入ってしまった。電車で他の図書館へ行き、ファーストフード店も利用した。
午後イチからの試験時間に合わせ、十日ほど前から昼食を十時三十分に済ませるようにした。外出の際は左腕に慣れない腕時計をつけた。
寒さ対策はどうしようと投げかけると、厚手の靴下と答えが返ってきた。
”諦めるな!簿記二級合格!!”
筆ペンで書いた文字を目に付くところに貼って勉強した。
”諦めるな!簿記二級合格!!”
当日の朝、再度筆ペンで、今度は大きく書いた。
腕時計と教室の時計はぴったり同じ時刻を示していた。午後三時を回った。
試験は終了した。