寒さを凌ぐ

サイズが大きいからという理由で、母からフリースの上着をもらったのは夏の暑い日だった。

口には出さなかったが、特別気に入ったわけでもなかった。着るあてもないなら、じゃあ私が部屋着用にするよという気持ちで受け取った。
しかし、自宅に戻ると少し後悔した。極力モノを増やさないようにしていたのに、ブレた自分にがっかりした。しかも量販店で手に入る上着を関西から東京へ持ち帰ることもなかったのだ。

 

ちょうど図書館の自習室に通い始めた頃だ。薄手のカーディガンでは寒さが凌げなくなってきていた。いつも季節の変わり目にはなぜか着る服がない。そんな時、衣装ケースに例のフリースをしまってあったことを思い出した。

ちょうどいい。着脱が楽で暖かい。
自習室でも部屋でも頻繁に脱いだり着たりして、体温を調整している。買い物へ行くときももちろん着ていく。部屋着と決めつけた上着をどこでも四六時中愛用している。ベッドの端っこに脱ぎ捨てて一晩放置してもしわにもならない。

気に入ったモノでないからという理由で、部屋で着る用と決めていたのは私である。外からは誰も何も思わない。
勝手に決めている”そういうこと”は、他にもたくさんあるのだろう。

 

フリース以外に色違いのズボンを何本も娘にと譲り受けた。
母は丸い体形をしていたのに、一時期は痩せてSサイズを着用していた。元に戻った体にこちらは”小さいから”という理由だった。

すっかり手放せなくなってしまったフリースだが、もう時期もっと寒さを凌げる上着が必要になる。二年ほど買いそびれているダウンを今年こそ買えるだろうか。こちらは気に入ったモノを手に入れたい。