”まだかな?”という声が時々聞こえる。私も隣に座る息子に同じことを言う。
風はあるが、影響に値するほどでもない。明日には台風が接近するが、今日の天気は良好で安堵していたぐらいだ。中止になる要素もないが、まだ催しは始まらない。
開始時刻に到着した私達は、すでに人で埋まった河川敷の後ろの方で、横並びになって腰を下ろしていた。なんのアナウンスもないまま、三十分が経過した。
突如、カウントダウンが始まり胸が高鳴る。
「どーん、どーん」
開始時刻が遅れていた分、ひと際歓声が響いた。自然と拍手が沸き起こる。
心臓まで響く音と共に上がる花火は、迫力満点だった。下から噴き出るように、上から流れるように、高く上がって迫ってくるようにと、次から次へと上がる花火の演出が、見事で感動した。何も知らずに座ったこの場所は、真正面から眺めることができ、特等席だった。
時々高く高く上がる花火があるが、自宅近くの土手から小さく見えるのは、きっとそれである。そのほとんどが見えていないのは、なるほど、間近で見て納得した。
人混みの多さが分かっている場所は、どうも尻込みしてしまい、率先して出掛けたりはしない。花火会場までわざわざ見に来るなんて、実に何年ぶりだろう。夫の声掛けで行くことになったのだが、家族四人揃って見に来られたのも、なかなかいい思い出になった。
この会場は、自宅近くから花火が見えるくらいだから、実はそう遠くない。確かに人は多かったが、身動き取れないほどの窮屈さはない。これなら、我が家の恒例行事に加えても良いかもしれない。
雲の流れが分かる程度に、風が吹いていた。最後の花火の煙も、終わりを告げるように風に乗って消えていく。ゆるやかな動きの空も明日は一変する。
夜遅く、携帯電話の通知音が鳴った。
明日は無理かもしれないなと、”明後日になる可能性がある”と返事をしておいた。
台風は刻々と近づいている。
夜中に勢いよく降り始めた雨が、翌朝上がっていた。
拍子抜けするも、外出困難なほどにまた降りだすかも分からない。用事を済ませるべく、郵便局へ向かった。発送が完了した旨、昨日返事をしたフリマアプリの購入者へ再度連絡をする。
また一つ、モノが減る。