兎にも角にも

三人席のうち、真ん中の席に腰を下ろした。窓側には、娘がいる。
西へ向かった新幹線は途中で母を乗せ、さらに西へと向かった。

 

島にある唯一の宿に着いたのは、もう夕方だった。

長旅で疲れた体を少し休ませ、窓越しに見える彼らの元へ足を運ぶ。
彼らは食欲旺盛で、持参した人参とキャベツを無心に食べる。ただそれを眺めているだけで、のどかな時が流れる。
娘が行きたいといって、初めて知ったこの島には、野生のうさぎが生息している。

せっかくだからと、うさぎの島から足を延ばし、市街地を越え、また島へと渡る。
笑い声に視線を向けると、海外からの観光客に随分と馴れ馴れしく、食べ物を持つ手に鼻をくっつけるように、つきまとっている者がいた。
海に浮かぶ赤い鳥居のあるこの島に、鹿がいた。

 

母と娘と、三人で旅をしたのは初めてだった。
ゆったり旅は、時に交通機関の時間に合わせて、少し急ぎ足になった。
旅の行程を一任された私は、もう少しああすれば、こうすれば、などと移動の多い旅の難しさを痛感した。それでも、結果楽しい旅となった。
宿泊先で二回も大浴場に入る私と娘に驚く母や、こっそり宿泊費を聞いて夫に感謝する娘も、この旅を楽しんでくれたようだ。

とにかく無事に旅を終えることができ、ほっとする。