まっすぐ、まっすぐ、ただまっすぐ縫う。
結局、必要に迫られた時にしかミシンの出番がない。それでもミシンを動かしていると、次は自分のために何か作ってみたくなる。
一日中ミシンを動かしていたい。
ニメートル近い布は、食卓の上に収まらず、フローリングに広げて裁断する。
簡単な作業だが、案外時間がかかる。
彼女が寒いと言う。
玄関に近い彼女の部屋は、確かに寒く、時には洋室に移って寝ることがあった。
新居に越した、彼女の部屋もまた、寒いと言うのは想像がつく。
大きな窓と小さな窓に囲まれたワンルームは、玄関と部屋の間に仕切りがない。
カーテン代わりに垂らした、寸足らずの布を持ち帰り、今朝仕上がったカーテンを取り付ける。採寸していたものの、ちょうどいい長さに満足する。
玄関を入ってすぐのところには、突っ張り棒に厚めの布を垂らし、寒さ対策をする。目隠しも兼ねて、こちらもちょうどいい。
カーテン選びもままならず、彼女は忙しく日々過ごす。
使っていいよ、と言われた彼女の部屋は、まだ引っ越しした日のままだった。
裁縫道具を出しっぱなしにして、一日中ミシンを動かす日も近いかもしれない。