逆算

すでに一ヶ月が経過していた。三ヶ月で片付けると宣言した日から、つまり期限まで残り二ヶ月になっていた。この一ヶ月の成果は、ほとんどなかった。

年末を迎える少し前に期限を設定したのは、年末はゆっくり過ごしたいからだった。片付けを終わらせたくて仕方がないのに、短い期間では無理だろうと半分諦めの気持ちがチラチラする。

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空は雲一面に覆われていたが、雨が降らないことを確認して傘を持たずに出かけた。十一月並みの肌寒さと天気予報で言っていたのは、なるほど本当で、セーターを着てきて正解だった。歩いて二十分ほどで、つい最近も来たばかりの場所へ着く。石畳の参道を進むと、ツーンとした匂いが鼻をムズムズさせる。イチョウの木の下には、たくさんの実が落ちていた。今日もまた、道中の無事を願ったあとの「お礼」を言う。一泊旅行から帰った母は、電話の向こうで、とても楽しかったと言っていた。

刻々と冬に向かっているのを感じるのは、ぎんなんの匂いや、冬の寒さばかりではなかった。今月に入って、三通目の「保険料控除証明書」がポストに届いていた。
洋室の一角の書類は、あと少しで片付く。そう思うと、一旦ここに放り込んでも、すぐさま整理されるのだから特に問題ないだろうと、とりあえず置いてしまう。あと少しと言いながら、ここがいつ片付くか分からない。そのうちまとめて、また押入に追いやる可能性もゼロではない。それではいけないと、三通目は手元に置いて、残りの二通を救出する。

置く場所が決まっていなかったり、整理の途中だったり、置く場所を決めてもそこが崩れだしたりすると、手に持った「もの」をとりあえず置いてしまう。都度、整えながら「もの」を置くことができない。

ひととおりの家事を終えたあと、なかなか片付けに取り掛かれない。しかも、何か一つでも、例えば銀行に行く、日用品を買いに行く、コインランドリーに行くなど、外出予定が発生する日は、特にそうだった。

一番ありがちなのが、結局残りの二ヶ月も何もできなかったという結果を迎えることだ。それだけは避けたい。今まで何度も、計画を立てては何もできずを繰り返す。今度こそと、再度計画を立てる。
取り掛かるまでに時間を要するのもなぜなのか。書類整理はとっても気が重い、衣類整理は場所確保が大変、時間が中途半端、家族に聞かないと分からない、などなど。苦手意識と面倒なことという思いが、取っ掛かりの邪魔をしている。片付けたい気持ちは人一倍なのに、本当に嫌になる。

期限を決めて計画を立てようとしたのは、来年、再来年、この先ずっと、片付けに悩まされず過ごしたいからである。そう一日でも早く、そうしたい。片付けが終わった先に、何かを始めたいという思いが強い。もっと未来を具体的に想像する。そして未来から現在を考える。