テンキによる心の持ちよう

脱衣かごの中を空っぽにしたことを後悔した。何も急ぐことはなかったのだ。雨が続いた日の翌日、晴れると予報された天気は曇りのまま一日を終えた。鴨居にかけた洗濯物は10枚ほどで、残りの洗濯物は、その多さにどうしようもなく放置した。梅雨入りしてから2週間、まだ乾ききっていない洗濯物を取り込む日が多くなった。

デジタル式の置時計に表示されている数字は何回みても変わらなかった。エアコンのないダイニングは、隣の洋室で稼働するエアコンを頼りにしていた。しかしダイニングの置時計は、湿度を示す小さな文字を70%に維持したまま、時だけを刻んでいた。

一段と蒸し暑さを感じたこの日、梅雨は洗濯物のことだけが問題ではないと気付かされる。夏の暑さが来る前に、体が湿気に呑み込まれそうになる。体調を崩してしまうのではないかと不安がよぎった。梅雨明けまで「あと1ヵ月」という夫と、「まだ一ヶ月」という私。捉え方は人それぞれだった。

 

時折、私の心は暗い闇のなかに呑み込まれることがあった。家族の役割分担を考えたとき、必然的に与えられた仕事を全うできない自分と義務感に押しつぶされそうになるのだ。
ここ一年ほどいろいろなことを考える時間が持てた。まだ何かを導き出している途中ではあったが、暗い闇がみえても入口で留まっている。もう呑み込まれることはない。
パートを辞めたことで手に入れた時間は、私にとって大きな意味があった。「人生の転機」がもう一度訪れたのだ。

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「みぃ、雨が降ってきた!今日降るんだっけ?」

『この辺りは降らへんって思てたけどー、まぁ、曇ってるんやからそんなこともあるで、ゆめ子さん』

「そっかー。今、洗濯物を取り込んできた。やっぱり乾いていないのがある」

『洗濯物との日々やな。来年の梅雨は、雨も楽しめるとええな』